メンデルスゾーン『管楽のための序曲』

天才と称された音楽家は、無数に存在する。そのなかでも、フェリックス・メンデルスゾーンはたしかに天才だった。

『管楽のための序曲』は、1824年に、15歳だったメンデルスゾーンによって作曲された。その音楽性はすでに成熟しており、「神童」などという称号を持ちだす必要のない素晴らしいものである。管楽合奏という形態におけるアルファでありオメガ。おそらく、人類が「生身の音楽」を捨て去らない限り、永久に記憶され続ける楽曲だろう。

21世紀はもはや天才の時代ではない。私たちは、すべてが刹那的に消費されていく炎上の時代に生きている。こんな時代に、200年前の音楽を演奏することに意味があるのだろうか。そもそも、私たちの身体が生演奏を求めることに、なにか意味はあるのか。

その疑問にこそ意義がある。なぜやるのか? やりたいから。自分の身体を通して、音楽をしたい。それは自己満足かもしれない。しかし、アンサンブル_ツクバには「バトンをつなぐ」ことができる。

偶然、私たちは音楽と出会い、偶然、私たちは音楽を続けてきた。もし果たすべきことがあるとすれば、次の世代へ音楽を手渡しつづけることなのではないか。過去の巨人たちの遺産を守るために新しく演奏していくこと。次の偶然の子どもたちのために。来たるべき音楽のために。

アンサンブル_ツクバの第1回演奏会は、『管楽のための序曲』から始まった。次へと手渡しつづけること。手渡すべき価値のあるものを見出しつづけること。それが現代において生身の音楽に携わる私たちの使命なのだと思う。

藤井亮一(フルート)

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